広州のワニ

広州の徳政市場は、博物館のある中心地近くを歩いていて、たまたま見つけた。日本でいう「公設市場」の雰囲気で、きれいな建物に入った市場であり、怪しげではない。露店の多い清平市場は何度か訪れ、サソリや、センザンコウや、名前どころか何科に属するかも推測のつかない生き物が食材として売られていても、びっくりしなくなったが、普通の市場なので、ゲテモノ登場に対する「心の準備」ができていなかった。だから、ワニが商品になっているのを見た時にはさすがに度肝を抜かれた。
ワニ1匹分が、まず首の付け根、それから胴の真ん中、最後に尾のやや太い箇所で筒切りにぶった切られた状態で魚屋の棚に盛られていた。胴の断面は、思いのほか、丸い。ワニってもっとつぶれた楕円をしているかと思っていた。
銀と黒のまだら模様の体表は、分厚いうろこで覆われている。模様はうろこでちょうど色の分かれ目になるわけではないから、黒のうろこ、銀のうろこ、黒と銀とが半々のうろことあって、やや体から浮くようにへばりついた様は鳥肌が立ちそうなくらい迫力がある。
生前は人間の1人や2人は噛み砕いたことがあるのではないかと思える、避けた口は、二度とひらかれることはないのだが、牙は今も両側からのぞいて、活躍に備えているかのようだ。数分前まで生きていたのではないか錯覚しそうになる。
胴を4分割されていてもワニは猛獣だぁ。

・毎日入荷するのだろうか。
・どんな人が買っていくのだろうか。
・オーストラリアで食べるという話は聞いたことがあるが、中華料理ではどうんな一皿になるのだろうか。
・そもそもどこで誰が獲るのだろうか。
と、疑問は尽きなかった。