秘蔵っ子の馬鹿をつけあがらせて、自分の首をしめたおとど

将来、きっと
「防衛「庁」時代、および、防衛「省」時代を通して、史上最も劣悪なトップ」
と評されると思われる人物の辞表が安倍晋三に受理されて1週間経つ。新聞・雑誌のコメントも出揃ったようだ。ここらで、稲田朋美について、功罪を交え、総括してみたい。

その人格の低さを表す多くの言動のうち、「憲法9条上問題になる言葉は避けている」が出た時には、人を見る目が皆無の安倍晋三も流石に
「あれ、こいつ、まずいことを言うんだな」といぶかしんだのではなかったろうか?
そして、都議選での演説であまりにも有名になった、選挙への自衛隊利用発言には、安倍も
「しまった!! 正真正銘のバカを重用していた!!」
とホゾを噛んだかも知れない。彼がホゾを噛んだか噛まなかったか は推測の世界だから、新聞が報じている範囲の事実を語ろう:あの発言を聞いた ある自衛隊幹部は、「そんな事までレクチャーで教えておかないと、わからないのか!!」と、自分らのボスの脳天気さかげんに業を煮やした、という…

それにしても、この元大臣への、幹部の人望のなさはどうだ!?
「なぜ今 辞任なのか? 辞めるべき時は、もっと前にあったと思う」
「この1年、大臣と我々の心の距離は開く一方だった」
「大臣最後の日の式典、あんなに盛大に送り出してやる必要があったのか」
「稲田氏には二度と市谷(=自衛隊)に戻って来ないで欲しい」
と、この辺までは尤もとして、
「派遣部隊の生の声に正面から向き合おうとしなかった」
という声まで聞かされると、その「現場の声」を、死にものぐるいでデータから削除しまくった組織の幹部が何ぬかしてやがる?
と思わないでもない。
つまり、(稲田ごときを庇う気など、針の先ほどもないが)自衛隊の連中がここへ来て、辞めた大臣を口を極めてボロクソに言うのは、実は自衛隊が(今回の南スーダン派遣関連に限らず)隠蔽体質に染まっていることを稚拙な答弁でさらけ出してしまった大臣を人身御供として吊るし上げることで、組織自体への批判・追及をガス抜きしようとしてのことではないか、と疑ってしまうのだ。
言うまでもないが、我々納税者にとっては、日報問題が、稲田の資質問題の何千倍も重要である。【専守防衛】の内包と外延を決めるのは国民であり、そのための基礎資料たる日報もまた国民の財産なのだから。

さて新閣僚。
伊吹に蹴られたことで、トランプ政権初期の「主要な役職に、就き手がいない」と言われた体たらくを思い出した。
オトモダチで固める人事以外、してこなかった安倍にとって現局面は、いささか勝手が違うと見える。
固辞したのは伊吹1人にとどまったものの、安倍の政治手法への批判は強さを増しこそすれ下火になりそうにない。当然だ。
安倍は、政権に返り咲いて以降、一貫して人事権で恫喝を与える(言葉の本来の意味での)恐怖政治=テロリズムを敷いて来た。一方、党にとって、「支持率を集める装置」というのが唯一の安倍の利用価値だった。テロリストが利用価値を失くした時の末路なんて、そうたくさんのパターンはない。
流れが逆転した以上、今、この状況で安倍をかばうような発言は、自民党員にとって最も危険な行為である。まして、今回の第3次内閣の、オトモダチ主義の破綻を公に認めるがごとき布陣で、安倍下ろしが弛む筈がない。彼は、派閥バランスに神経を使った人事によって、そんな古い自民党的なやり方の否定ゆえに一定の安倍支持層を成したネトウヨ的な人々にも、愛想を尽かされるだろう。したがって私は、一部のマスコミ人が言う「安倍が反省を見せれば再び支持率がV字回復することもあり得る」などはたわごとだと思う。既に安倍晋三レイムダック寸前であり、退陣は時間の問題と見ている。よほどのサプライズ政策がヒットすれば別だが。

野田聖子がいくら人気があったといえ、稲田のあの敵失がなければ、あそこまでの都議選 地すべり的勝利はなかったろう。和製ヒトラーの、暴走に次ぐ暴走、質疑での侮辱に次ぐ侮辱を一気にやめさせた最大の原因は、さかのぼれば、安倍本人が最も目をかけた子飼いの人物だった。
極右暴走政権に、煙が出るほどの急ブレーキをかけさせた最大の貢献者という意味では稲田を称えたい。
そして、彼女をもっと早く更迭していれば、安倍の支持率は、一旦下げても持ち直したかもしれない。ならば、任命責任を問われるのを避けて能無しを続投させ続けた安倍の「保身」が、翻って彼自身を突き刺したわけだ。野党が頼りなくても、真宰は常に審判を下している、ということだろうか?

結局、稲田の1年は、
かたや、
日本会議で見つけたタカ派の若手を掘り出し物と思い込んだ、グランドファーザーコンプレックスの極右政治家と、
こなた、
あの程度のグッドルッキングと あの程度の頭を指して周囲が言う「才色兼備」等のお世辞を、お世辞と認知できないお嬢様、
この2人が見せた、世にもアイロニカルなファース(笑劇)だった、とまぁそんなところであろう。

最後に、ついでの一言。
会見で稲田が見せたすがすがしい笑顔の理由も水曜日に分かった。「自分から辞めてくれれば、閉会中審査は出席しなくていいよう決定を出してやる」みたいな取引がなされたのは、まず確実だ。

シリアの基地に米ミサイル

ヘイリー米国連大使が主張する、トランプ政権の理窟はこうだ。
「アサドは、前にも、自国民に化学兵器を使った」「その時使われたのと同じ機種の航空機が4月4日の攻撃時にシリア空軍基地から被害地域の近くまで飛んだ」
早い話が、?アサドは前科者である、?前科者が前に凶器を運搬した乗物と同型の物が移動した日に、人が殺された。?と?から、犯人はアサドである。そして、同じ凶器による犯行が広がらないよう、基地に警告なくミサイルをぶち込むことは、正当な防衛の範囲である、という論理だ。
これは、状況証拠だけで犯人を決めつけて構わない、その領域に先制攻撃をしても構わない、という主張に他ならない。
最も冤罪を生みやすいこういう構図と単独行動とを正しいものとし「権利を行使しただけだ」と豪語するからには、北朝鮮が、世界でアメリカがやっていることに対し「我が国への脅威」だと理由づけて挑発行為に出るくらいは可愛いもの、ということになってしまわないか?
私は、北朝鮮の軍事示威を認めない。したがって、トランプの今度の行為も認めない。たとえ、のちの調査で、アサドが化学兵器を4日に使ったことが証明されたとしても、である!
第一、これによって、シリア内部のパワーバランスが内戦時代に逆戻りすれば、イスラム過激派を利するだけであり、そのほうがはるかに「米国の安全保障に反する」ではないか?
トランプが、選挙前に言っていた「ロシアと協力し、IS殲滅を優先する」という公約への違反でさえある。
「この公約を最優先で実行するだろう」と予測していた私は、ここまでトランプが狂っているとは予測しきれなかった。
そんな狂気の沙汰をヌケヌケと真っ先に支持する安倍晋三もまた、ここまで恥さらしとは、・・・・いやまあ、こっちは想定の範囲内だったがな。

朴槿恵の退場

韓国の最高権力者は、歴代、退任後に訴追されたり死刑判決を受けたり「自殺」に追い込まれたりしてきたが、今回は人気満了さえ許されなかった。朴槿恵という人は、これで2度、青瓦台を失意のうちに去ることになった。1回目は38年前、父親が殺された時である。74年に暗殺された母親に代わる形で、朴正煕のファーストレディを務めていたが、父親を暗殺され、彼女もまた、大統領府にいる理由を失くしたのだった。
今回の罷免を齎したのは彼女のいかにもまずい政治手法や、不埒な機密漏洩だ(今はまだ「容疑」ではあるが)が、その遠因には、両親を政治的闘争で奪われた者の、余人には想像を絶する孤独感も大きな要因としてあったのだろうと思う。それが、心を許せる友人を、閣僚や公のブレーン以上の厚遇で扱う朴槿恵流を生んだのなら、皮肉でありかつ哀れである。
さて、これで、遅くとも5月初旬までには大統領選挙が行なわれる。候補の中では、5年前に彼女に惜敗した문재인文在寅=더불어민주당:共に民主党=が、世論調査で2位以下に大差をつけている。韓国国民も、李明博から2期続いた保守系政権の失政と経済格差の広がりに嫌気が差しているようで、この情勢だと戦後3度目の政権交代成立の公算が大きい。政権交代など、当分不可能に限りなく近い日本に比べ、うらやましいことだ。
しかし、現在の情勢で政権を取っても、共に民主党は「進歩派」の特色を出しにくいだろう。金大中ばりの、北に対する宥和政策は、今とてもじゃないが打ち出せるものではない。独島(日本名 竹島)問題などで日本に強く出て気を引く手にしても、本来親日路線であった筈の保守系大統領が進歩派のお株を奪うかのようにやってしまったあとでは、国民からは見透かされ、経済停滞を打開したい財界からは支持を失うだろう。
おまけに、トランプ政権のアメリカとどう同盟関係を舵取りしていくべきか、という難題が待ち受ける5年間である。朴槿恵が属する自由韓国党(先月までの「セヌリ党」)は、むしろ、政敵に権力を押し付けたいくらいではないか、と言えば怒られるかな?
個人的には、文在寅以上に人気絶大だった潘基文の手腕を拝見したかったところだが、出馬しないとのことだから仕方がない。
まぁ、前代未聞の事態が何年かごとに起こる半島が、この春 慌ただしくなってくる。韓国はやっぱり、Kポップより映画より、政治が面白いな。

暴言経済人が権力の頂点に立つ

トランプ米大統領の当選確実の報に900円安だった東京市場、一夜明けると埋め戻した。経済界の動揺ぶりが伺える。多くの人が先の読めなさに、ますます閉塞感を募らせるだろう。
選挙運動期間中に、共和党の要衝にいる者たちがトランプ不支持を表明したが、あれはスキャンダルのあまりのひどさに反応したのであって、必ずしも政策に反発したわけではない。とは言え、これから彼の政策として、与党にとっても許容しがたいものが打ち出され続けるようだと、最も極端な場合、大統領暗殺といった事態も考えられなくもない。
そこまで行かなくても、米国社会の亀裂・分断は、建国以来の深刻なものとなるのは間違いないと思う。
トランプ流をまねる極右政党が、日本でもじわじわ、支持率を伸ばしてくるかもしれない。排他主義の雰囲気はそれでなくても強まっている。警戒を怠りないようありたいものだ。

パリ同時テロ

ネット掲示版に書かれるコメントを見ると「難民に混じったISの犯行では?」という推測が多いようだ。現場で射殺された者の像を精査することで、この推測の当否も明らかになるだろう。だが、ISが絡んでいるとすれば、あの組織は、アラブ系の人だけではなく、欧米人の中にもシンパを増やし、彼らが自国に帰って自国民に対し無差別テロを起こすよう洗脳することに、並々ならぬ力を注いでいる、と報じられていたのではなかったか? ならば、自国民の帰国を制限することなど長くはできない以上、国境封鎖など気休めにもなるまい、と考えるが…

カルテットがまぶしい

 中東民主化革命の口火を切ったチュニジアで、イスラムの教義に則った政治を目指す勢力と、政教分離を掲げる勢力とを歩み寄らせた「国民対話カルテット」のノーベル平和賞受賞は誠にこの賞にふさわしいものと思う。9年前に同賞を受けたグラミン銀行の活動意義に似て、正しい意味での「積極的平和主義」への普遍的なモデルを示したからだ。
 この枠組みを構成する、労組・経営者団体・人権擁護団体・弁護士会の各会員の中には、宗教に基く政治を望む人もいれば、世俗派もいるだろう。しかし、そういう意見の違いを越え、“与野党が衝突して議会が議会の体をなさない現状だけは何とかしたい、まして内戦突入などは許さない”という一点で異質な組織が連帯した。シリア、リビア、イエメン、エジプトの国民は羨ましがっているのではなかろうか。
 私もチュニジア国民が羨ましい。総連・経団連・人権NGO日弁連が共同で「集団的自衛権行使賛成派も反対派も、噛み合った議論を経ずに結論を出すことだけは許さん」と国会を叱っていれば、あそこまで曖昧な概念だらけの欠陥法が出来上がっていただろうか? 日本の場合、仮にそういう話が持ち上がっても足波を揃えそうにない団体が1つある。チュニジアになぞらえることで憲法と国民無視の政治を誰が支えているのか、にも気づく。
 カルテットのような枠組が人類の共有手法になっていくかどうか? 日本国民に、多様な政治参加方法を生み出そうとする熱意があるかどうか、も試されているのだと思う。

川島なお美(54)

私の手元に2冊の写真集がある。
1冊は『WOMAN』。川島なお美 三十路 間もない頃の白い裸身が写っている。
もう1冊は、同じ人物の、まだ丸顔で少女の面影が残るアイドル時代のミニ写真集。
そのどちらを買った時も、こう早く、その被写体の訃報を聞く日が来るとは想像できなかったが・・・。

大学生時代から人気のあった彼女が、のち「お笑い漫画道場」で、可愛いだけではない、笑いのツボを心得た優れたタレント性で人気を広げたことはよく言及される。
古舘伊知郎のTV番組にゲスト出演した時、古舘さんが彼女のことを、そのマルチタレントぶりと名古屋出身であることと引っ掛け、“味噌煮込みビーナス”と表現したら、彼女は、謙遜も照れもせずに、「おいしそう〜」と返した。そんな、ウィットの効いたキャラクターがずっと好きだった。
若い頃を中心に何曲か歌も出した。20台に歌った「愛しのマンドリーノ」「GEMINI」などはなかなか名曲だ。遺作がミュージカルだったくらいだから、音楽にかける思いも大きかったのだろうと思う。
私と同じ年に生まれた彼女は、私が30の時に30歳、50になったのも一緒、この先も同じ年に還暦を迎え・・・と、同時に歳を重ねていく姿を見せてくれると思い込んでいただけに、ちょっと年上のキャンディーズのスーちゃんの時にもましてショックだ。
ただ、腫瘍細胞に栄養を吸い取られながら、抗ガン剤も拒否して、つい最近まで舞台に立った彼女の“引退なき最期”。自分の命の末期まで「自己決定権」を行使しようというあの態度・あの覚悟によって、日本人の2分の1がガンで死ぬ近未来に先駆け、末期ガン患者の選択肢サンプルを示してくれていったのだと、残念がる頭を切り替えようと思い始めたところである。
10代の頃から一貫して、チャレンジできる限りのことにチャレンジしてきた川島なお美らしい、不治の病への挑み方だったかもしれない。痩せこけて痛ましいと思われることを厭わず舞台に立つには、冒頭に書いた写真集や『失楽園』で全裸を見せた時どころではない勇気を要しただろう。己の姿を世の中にさらけ出して、女優が1人、この世で出来る全てを終えた。
カミングアウトした有名人ガン患者の嚆矢として逸見政孝が今も挙げられるのと同様、将来、ギリギリまで現役であり続けたガン患者を数える時、彼女の名はその典型として永くその筆頭格を占めるに違いない。
冥福は、私などが祈る必要もなく、決まっていよう。