韓国KTX

以前に韓国のKTXに乗って見たことがある。乗車区間は釜山−ソウル間だった。開業後何年も経ってからである。
座席の半分は常に進行方向と逆を向いていて、利用者に大変評判が悪いと聞いていた。実際そのとおりだったが、その日の私の指定席は進行方向を向いていた。
まるで、名古屋鉄道の準急なんかに使われる車両みたく転換不可能な椅子なんて、田舎の電車っぽく、それはそれでよい。個人的には、逆向きにすわっても、それなりに背後から前へ飛んでいく車窓を楽しめる派である。

私が、目を疑うほど驚いたのは、座席の向きとは別のことだ。
窓の数が、座席の列(ここで列とは横に数える)の数と一致しないのである。
普通、列車でもバスでも航空機でもシートピッチと、窓どうしの間隔は、何らかの関連をつけられている。多くは、一致するか、窓の数が座席列数×2分の1である。
車椅子専用スペースがあったり、固定クロスの場合に車両端っこに向かい合わせでない席が1つだけあったりして、ちょうどの数字にならないこともなくはないが、基本は、椅子2列もしくは1列に窓が1つである。列車は椅子2列に窓が1つが多いが、のぞみのように1列に窓が1つのもある。ちなみに航空機は気圧の関係で窓を大きくできないから、椅子1列に窓が1つだ。
しかるに、KTXはこれが全く不規則で、対応なく配列されているのである。
よって、席によっては、窓と窓の間の柱にふさがれて景色はほぼ全く見えず、またある座席は大パノラマが楽しめる代わりに、居眠りしたくなっても両側のカーテンともに他の客の手元にあって動かせない。
何を考えて、こんな車両を作ったのだろう。
台湾の新幹線は、JRが車両を担当したから、こんな異常な車両は使われていない。韓国人がオリジナリティを出して(出したつもりになって)、マヌケな結果になることは、しばしば見られるが、ここまで稚拙な例は珍しい。

この日は、座席の向きのみならず、窓の当たり外れに関しても、ほどほどに景色のよく見られるめぐり合わせだったのでよかったが、こんなことで運を使ってしまった。

ひょっとしたら、乗るたびに向きと窓の2点で、その日の運不運を占える車両を、意図して開発したのかもしれない。

皮肉な書き方をしたが、それでも、整備新幹線開通と同時に(または時限つきで、騙し討ちのように)在来線を切り捨ててしまうJRよりは、はるかに上等である。むしろ、前から走っていたセマウル号ムグンファ号は、並行区間で運賃が引き下げられて、のんびり旅行したい向きには、ありがたい。KTXと在来特急との本数のバランスもよい。
選べることが即ち、豊かさであろう。その意味で、JRは世界一高価で、世界一貧しい鉄道である。海外を鉄道旅行するたびにそう痛感する。