伝説の蛇女をめぐって

十数年ぶりに、和歌山県を旅行した。主目的は、熊野本宮。で、偶然通りかかったのだが、「安珍清姫伝説」の悲劇のヒロイン・清姫の墓というのを見つけた。

地元の人々が、彼女の霊を慰めるために建立したとある。伝説の蛇女のこととて、埋葬すべき遺骨の現物があったとは思えないので、「墓」とは言いながら、「廟」とでも呼ぶほうが実体に近いだろうと思う。

西暦928年の話だと。
物語集にそう書いてあるということは、書かれたのはずっと後だから、伝説としては比較的新しい話なのだと知った。


ところで、安珍を焼き殺した炎がどれくらいのエネルギーを持っていたかを試算(?)したサイトを見つけた。それによると、現代人1人が1年に使う電力消費量と同等のエネルギーだそうだ。
http://homepage3.nifty.com/kouhei1016page/Math/Math056.HTM

逃れようとした安珍が隠れた鐘を、摂氏200度まで熱したという想定だが、80度程度でも充分彼を蒸し焼きにできるし、90%が無駄な熱になって逃げるという想定も、ちょっと大き目の数字かと思うが、そこを手直しするとしても、どえらい熱量には違いないようだ。

そういえば、9・11テロで、ワールドトレードセンターが崩落したが、計算するとジャンボジェットに満タンのジェット燃料を、熱効率100%で燃やしても、あのビルの1つの階の全鉄筋コンクリートを、あんな事態になるほど熱で融解させるエネルギーにはとても足りないんだそうだ。そのことが、何者かが予め爆弾を仕掛け、火災ビルを完全に壊し、アルカイダに余分の罪をきせたのだ、とする「陰謀説」の根拠になっているときいたが、その真偽はともかく、温度を上げるのに使うエネルギーって、けっこうたくさん要るものなのですね。

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伝説の化け物女の「墓」を立てる人もいれば、SFを科学するみたいな手法で伝説にチェックを入れなさる御仁もいらっしゃる。どちらも好きだなー、こういうの。