「内藤VS亀田」VS紳助の行列

ゆうべ、ずっと楽しみにしていたWBCフライ級チャンピオン戦が終わった。47分間が、実にあっという間だった。
内藤ファンとしては残念な結果だが、文句ない大差がついての敗北だし、また、あの全力戦で負けたのなら、仕方ない。干支で一回りも若い挑戦者が、若さプラス周到な研究でタイトルを奪ったのだ。昨日までの王者に「お疲れ様でした」、新王者に「やったな」と言うしかない。
視聴率も最大50%を越えた地区もあったとかで、大げさでなく国民的注目を集めた試合だった。視聴した何千万人の頭に今も、亀田家の次男が挑戦したときのあまりに汚い試合のことが消えずにあったせいだろうが、けさの各朝刊は、亀田のことを「人間的にも大きくなった」とか「成長した」とか褒め上げていた。ただ、褒める根拠が「(試合直後のインタビューで)内藤への感謝も忘れなかった」から、といった程度のことで、これにはちょっと首をひねる。
ほとんどどのボクサーでも口にする、当たり前のせりふではないのか。今までが“大人”でなさすぎた(それが計算された露悪なのか、未熟なせいか、は知らない)のだ。第一、今回も試合前は、チャンピオンのことを「あんなのはだめだ」とかこき下ろしていた。別に、「勝ったとたんに急に余裕を見せて敗者をいたわる奴」と、そこまで底意地の悪い評し方をする気はないが、新聞記者までが調子に乗ることはあるまい。
ただ断っておくが、筆者は、以前から、リング外での多少の挑発的言動は格闘技には付き物だという考えなので、相手をこき下ろすのもアリだと思っている。ボクサーも、いろいろなタイプがいていい。前回ボクシング界が亀田親子に下した懲罰も、マナーが悪い云々ではなく、意図的な度を越えた反則へに対してであって、それ以上でもそれ以下でもなかった。
筆者は、安易にヒーローイメージを作り、誘導しようという、マスコミの単細胞な書きように首をひねっているだけだ。

                       *

ところで、情なかったのが、世界王者戦の実況に対する裏番組に当たってしまった「行列のできる法律相談所」だ。完全に捨ててかかっていた。視聴率競争で勝ち目がないからだろう、目玉と言えるゲストはいつになく一人もおらず、体力測定とか称して、「フレンドパーク」以下の構成でお茶を濁していた。
それはそれで、局のひとつの戦略として、あってもいい(実際よくあることだろう)が、なにせ潔くないのは、番組最後の島田紳助のせりふ。
「テレビをご覧の皆さん、今日のこんなのが面白いとは思ってませんので、来週はまたきちっとやります」
紳助の素(ス)のせりふか、これもまた構成作家に言わされているのか知らないが、まったくもって後味が悪い。
試合で死ぬこともある世界で命がけの闘いをしている男たちの勝負と、バラエティ番組とを比較してどーのこーの言う視聴者なんかいないんだから、ビデオに録って見ている者の身になって、お笑いはお笑いとして精一杯やってよ。それは世紀の試合の裏番組に当たってしまってもお金を出してくれてるスポンサーに対する礼儀でもあると思うんだがな…。

これに対して、もし「テレビの世界はそんな甘いもんじゃない」と言うんだったら、MCにくだらん言い訳をさせるのも慎むべきだ。