JRの体質 #2

毎日新聞夕刊が、今日次のようなニュースを報じた。要約すると

JR外房線鎌取駅千葉市)で、ある女性が名古屋までの新幹線の切符を買おうとした。実際に乗車するのは、その女性の夫で、夫は体が不自由なため、介助犬が同伴する旨、窓口駅員に伝えた。すると、駅員は、介助犬の同伴は認められないと、発券しようとしなかった。
介助犬の同伴は権利として法律で認められていることを、女性が説いたが、駅員は譲らず、夫本人が電話して、やっとJR側が間違いを認めたものの発券されるまで3時間かかった。

という記事である。


この奥さんの主張どおり、公共施設を設置する者は、補助犬の同伴を拒むことが許されない。

身体障害者補助犬法」第7〜11条(うち、交通機関に関する条文は第8条) ↓
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H14/H14HO049.html


いやしくも鉄道会社に勤務し、それも出札を担当する人間なら、すべからく心得ておくべき法律だ。しかも、この法は成立してから、もう7年にもなる。
とはいえ、どの職場にも無知な者はいるし、また社会人としての勉強に努めてはいても、すべての関連した知識をカバーすることはできないのは仕方がないとしよう。JRの問題は、この駅員が客から無知を指摘してもらいながら、あくまで譲らず、3時間にわたって自分の間違った主張を曲げなかったことであろう。

ここに、当ブログが10月9日にとり上げた件と共通の、JRの体質が透けて見える。
すなわち、
旅客・貨物を運ぶ業を営むうえで必要な情報を持たないばかりか、機会あれば調べ、正しい情報を身につけていこうという意志すらない
という体質だ。
おそらく、この駅員個人も、特に頑迷な性格だったわけではなく、粘れるだけ粘って客にあきらめさせよう、折れるのは利用者のほうだ、という接客態度を入社以来叩き込まれているのだと思う。
まともな企業なら、「では、念のため、お調べします」と、法令に詳しい部署に問い合わせるはずだ。それは、結果的に会社の職員側が正しかった場合でも、必要不可欠な措置である。

今回の件で、日本介助犬協会は、再発防止の要望書をJRに送付したとのことだが、賭けてもいいが、JRのこの体質は治るまい。
無知なだけでなく無恥な体質の企業は、社会的弱者の訴えなどには、ほとんど影響を受けないものだから。



なお、上に要約した毎日新聞の記事と同じ内容の報道を、他の主要紙でも探したのだが、見つからなかった。仮に私の探しかたが悪かったのだとしても、社会面の最も目立つ箇所に7段を使って書いた毎日に比べれば、他紙は見落とすほど小さい記事だったのだろう。
そして今日の夕刊には、同じJRの「新幹線が332キロ走行」の記事も載っていて、こちらは、朝日、毎日、日経、中日、読売と、各紙が報じた。外国の大使や大使館員を乗せた列車が特別に、普段の「のぞみ」より速く走った、という内容だ。VIPに弾丸列車ぶりをアピールするのは積極的に努めるくせに、障害のある乗客の権利はやっとしぶしぶ認めるだけのJRもJRなら、マスコミの、記事の重要度を判断する「バランス」感覚も、どうなのよと思う。

その点、今回、毎日の社会部のデスクは、よい判断をした(中日はブロック紙だから、千葉のことまでカバーしてなくても責められない。系列の東京新聞には載っていたかもしれないが、未確認)。
そして、毎日新聞よりもっと評価すべきは、この障害者の男性だ。あまりにJRが分からず屋なので、いっときは、もうあきらめて名古屋へは自動車で行こうかとも思ったらしい。しかし、いや、ここで前例を作っては、今後、新幹線を利用しようとする身障者の仲間のためにもならない、と考え直して、粘り勝ったというのである。

これから、介助犬を連れてJRに乗ろうとする際は、今日の夕刊の切抜きを切符売場まで持参したほうがいい、などというテクニック(?)が、障害者団体の会員の間で普及したりしたら、いよいよJRも終わりだ。せめてそういう恥の上塗りだけは、避けてみろ、JR!