ハイチ大震災は遠い国の話か

ハイチで発生した大地震は、日を追うごとに被害の甚大さが伝わってくる。
北米・中米・南米ともに全く渡航したことのない筆者は、先日までハイチがどこにあるのかもよく知らなかったし、最貧国の一つだとも知らなかった。
同じ「最貧国」というレッテルを貼られている国でも、アフリカのそれと、アジアのそれとでは窮状の程度がまるで違う、というのはよく指摘されるところだが、報道で見る限り、ハイチはアフリカの最貧国の現状に近いように見受けられる。アジアの最貧国、例えばネパールとかバングラデシュなども経済的にはずいぶん貧しい所だが、天災(例えばハリケーンなど)で首都を痛めつけられても、そのためにあそこまでひどい無政府状態に陥ることはないのではないか。
また、
・1つの島をドミニカと二分していて、その国境の両側で貧富の差が歴然
・冷戦時代が終焉した90年以降も、民主化に成功しなかった
・窮乏の主たる原因は、独裁の後遺症
・その独裁者は、父子2代

とのことだが、この列挙すると、北朝鮮にそっくりだなと思う。
「島」を「半島」と置き換え、「独裁の後遺症」を「独裁の継続」とちょっと変えてみるだけで、日本のすぐ隣にも、共通点の多い「最貧国(ないしそれに匹敵する破綻国家)」があったことに思い至る。

地震については、朝鮮半島は地盤が堅く、日本・台湾のような心配はない。しかし旱魃は何年かに一度起こっているのは間違いなさそうだ。農作物が絶対的に不足し、世界が米などの「人道支援」を供する年にも、同じような気候条件であるはずの韓国では、多少の凶作こそあれ餓死など想像もできない。
今回もドミニカ共和国からはほとんど被害の情報が伝わっ来ず、それは震源がハイチ直下であったためのようだが、ハイチがドミニカ程度に機構のしっかりした社会であれば、死体がほうりっぱなしにされている現状のような酷いことにはならなかったような気がする。自然災害は、いつも、社会のひずみを残酷なほど露わにあぶり出すのだ。

この間のブログにも書いたとおり、異常気象とも言えるほどの寒波がソウルを襲った。幸い、韓国ではそれに起因する惨事まではなかったようだが、この寒波にしても、北には凍死者をもたらしているのではないかと危惧する。
そして地震はさて措くとしても、地球規模で異常な自然現象の増大が予想される現在、何らかの大災害が北朝鮮を見舞った場合、今のハイチに近い、病気の蔓延、暴動や犯罪の激増が起こり、人道支援や救援も進まない、といったことにはならないだろうか。

と、心配していた矢先、今朝の朝刊に、「北で天災や内戦などの非常事態が起こった際の対応策を韓国政府がまとめ上げた」との記事が載った。難民収容やワクチンの配布手順などを具体的に決めているそうだ。
「復興」と名づけるこの計画は、南北で再び軍事衝突に陥った場合のマニュアル「忠武計画」とは別個のものだ。
「復興」は、李大統領が2年前の就任後まもなく作成に着手していたもので、たまたま今回出来上がったという。だからもちろん、ハイチの地震とは無関係だが、なにやら単なる偶然によるタイミングの一致だけでは済まされない、人類社会の構造の一端が現われたような気がする。
韓国の憂慮が半島で現実化する前に、地球の裏側で、類似の条件下にある国の国民が犠牲になった、そういうことではないだろうか。