エゾシカの出る車窓を堪能

釧路→知床斜里気動車は、釧路湿原の東側のへりを、ちょうどその輪郭をなぞっていくように走る。
そこへエゾシカが恐れずに、軌道の中にもしょっちゅう入ってくる。列車は警笛を鳴らすが、保護の対象とされている彼らは、轢かれないことを知っているのだろうか、あわてて逃げたりしない。「どいてやる」といった感じである。列車のほうが、ノッチとブレーキをこまめに切り替えながら、こわごわ(?)進む。
実際、毎日1件以上、エゾシカの交通事故(道路を含んでの数字だと思う)が発生しているという。
このディーゼルカーが鳴らす汽笛は、ピーといった音だが、よくある機関車が出す、いかにも列車の汽笛といったふうなピーと違って、澄んだと言おうか、どこか単純な、倍音を含まない感じの音だ。何かの音に似ているな、と考えていたら、そうかシカ笛がこんな音だ、と思い当たった。推測だが、鹿が反応しやすい音色にわざとアレンジした汽笛かもしれない。
だいぶのろのろ走ったから、知床斜里へは遅延だろうなと思いきや、定刻だった。エゾシカに遠慮してスピードを出せないことは、初めから織り込んでダイヤを組んでいるのだろうか。

北海道の大地はやっぱり面白い。

この近くには、タンチョウヅルのサンクチュアリもあって、暖かい車内からその姿をまのあたりにできる。