笹を食べると

北海道で「笹まんじゅう」という和菓子を食べた。


漱石の『坊ちゃん』に、こんなシーンがある。
坊ちゃんが、四国の赴任先に着いて、宿で昼寝をしているとき、下女・清(きよ)の夢を見る。
彼女は、笹餅を笹ごと食べる。坊ちゃんが「笹は毒だから食べるのはよしたほうがいい」と言うと、清は
「いいえ、この笹が薬でございます」と言って、平気で食べ続ける。
夢はそこで醒めて、坊ちゃんと清とどっちが、笹の人体に対する影響を正しく把握していたのか、文豪は正解を書いていない。

子供のころ読んで以来、笹は毒なのか薬なのか、ずううううっと気になっていた。
今回食べた笹まんじゅうは、熊笹の粉末が混ぜてあるという。少なくとも、毒ではなかったのだ。
何十年来の疑問に決着がついた、と喜んだが、いや待てよ、清のように、餅を包んである笹を1枚まるまる一度に食べるようなことをしては、いかなる薬も過摂取は毒にもなるというから、坊ちゃんの言うことが間違いとは言えないかもしれない、と思い返した。

疑問は、そっくりそのまま残ってしまった…。あーあ