「アジア広域自由貿易圏構想」「TPP」ともに拒否せよ

インドネシアのリゾート・バリ島で、先週末に2つの重要な国際会議があった。東アジアサミットと、ASEAN首脳会議。
とり上げられた議題や参加国の顔ぶれには多少異同があるものの、両方の会議で共通に確認されたのが「アジア広域自由貿易圏構想」の推進についてであった。
これは、ASEANプラス日韓中を含む計16カ国で貿易自由化を進めようというもので、アメリカが入っていない。中国の、TPPに対抗しようという意図が大きく反映されているのは明らかだ。
それで、日本は、世界の2大経済大国の間で「板ばさみ」状態、というのがマスコミの示す構図なのだが、そんなことに悩むのなら、どちらも参加しなければよろしい。
そもそも私は、以前にも書いたように、貿易の自由化そのものが、今以上に物資の長距離輸送を増やし、よってエネルギー価格を高騰させ、ひいてはCO2排出に拍車をかけるという点で、反対の考えだ。
貿易の過度の自由化の流れそのものが、地球を大事にしようという世界の方針と両立しない。
「温暖化なんか知ったことか、フードマイレージなんぞ考慮してて、経済がまわるもんか。地産地消がなんぼのもんじゃい」という考えに人類社会がシフトしたとでも言うのなら、話は別だ。しかし、そういう説明のないままに自由化に走るのは、認めない。
よく言われる農業への影響ひとつとり上げたって、「日常食べる農産品は、労賃の安い国で作られたのを輸入し、日本は付加価値の高い農産物を作って外貨を稼ぐ農業に転換せよ」というのは、国民の健康という視点からも、あやうい、悪しき「国際分業主義」だと考える。
さらにTPPに至っては、「あらゆる領域の関税撤廃が、国民皆保険制度を揺るがす恐れがある」との理由で日本医師会がつとに反対していることにも耳を傾けるべきだろう。年金制度も根っこから揺らいでいるのに、この上、アメリカごときに健康保険までおいしいところを持ってかれてたまるかい。
どうしても、地域単位で競争力をつけて、他の経済ブロックに対抗したいという地域があるのなら、距離がさほど離れていない途上国どうしの小規模な自由圏にとどめるべき(もともとのTPPのコンセプトのように)。
何事によらず、日本としては、傍若無人さで世界ワースト1位と2位を争う米中が敷く路線には、ともに一線を画すべき時が来ている。