インドネシア旅行'08−バリのテロ

インドネシアでは、2002〜05年に4年連続で大きなテロ事件があり、JI(ジュマー・イスラミア)が犯行声明を出した。そのうち、02年10月と05年10月の、ともに死者100人を越す惨事はバリで起きている。
バリ島のリゾート開発された地域の一部は、それ以前にも、現地人が日本人観光客とトラブルになった挙句、刃傷沙汰を起こしているなど、あまり治安のよくない場所と言われていた。私の知り合いの、ジャワ島在住のインドネシア人は、「そういう悪さをしているのはほとんど中国人」と言っていたが、信じていいやらどうやら。
ただ、確かに、クタを歩いていると、このあたりの雰囲気は、開発の波に乗れなかった、または乗ることを拒否した人々にとってはクソ面白くもない、むかつく空間に違いなかろうな、と思う。経済的な面だけではない。トップレスで肌を太陽に晒す女性の姿にしても、「ここがインドネシアだからバカにして、あんな、自分の国ではできないような格好しやがって」などと解釈する向きもあるかもしれない。クタやレギャンなどのリゾート地から少し離れれば、これが本来のバリなんだ、と思える農村風景が広がっていて、我々がいわゆる「バリ」に抱くイメージは、実は局限された空間でしか通用しないイメージなのだと判る。
それでもなお、無差別大量殺人という手段にまで犯人たちを追い込むのが何なのかは本当のところわからないし、テロという「手段」そのものを肯定する気は微塵もない。

当局の取り締まり強化もあってか、最近はバリも平穏である。
そんな中、つい最近、ある法律がインドネシアの議会で成立したという。それは、女性が肌を露出することを強く制限する、というもの。その限界の詳細はわからないが、バリならではのエンターテインメントであるダンスは、ベアトップのような伝統衣装で若い女性が激しく舞い踊る。これも今後は御法度になるというので、斯界の団体などが猛反発しているというのだ。
インドネシアは世界最多のムスリムを抱える国でもあるが、中近東のイスラム諸国に比べると世俗的で、イスラム教の教義が割とゆるやかなことで有名だった。それが、今こういう法律が可決されるということは、コーランの教えにもっと忠実になろう、といった主張を国策に反映させないと政権運営が持たない、ということなのだろうか。それは原理主義テロが世界で多発していることと、どこかでつながっているのだろうか。
そしてまた、この新法に対するバリ・ダンサーらの反発は、それにとどまらず、「ムスリムの価値観を、他の宗教の教徒(この場合はバリのヒンズー教徒)に対し頭ごなしに押しつけるものだ」という、さらに大きな反発に発展しないのだろうか。
一旅行者にとっても気にかかるところだ。