インドネシア旅行'08−ボルブドゥールとプランバナン

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ジョグジャカルタのジャンボル・バスターミナルから、ボルブドゥールへは、所要1時間。
世界遺産「ボロブドゥールの寺院遺跡群」(上の写真)は、世界史の時間に「仏塔」と習ったし、世界遺産の写真集などにも「ストゥーパ」(すなわち塔)と書いてあるが、どうも厳密には「塔」だかどうか、諸説あって定かではないらしい。
「塔」とは、来世の幸福を願う人間の思いを少しでも天に届かせるための装置である、と聞いたことがある。だとすると、底辺の一辺が100mもあるボロブドゥールは、あまりに平べったすぎるように思える。おびただしい数のレリーフ、中央部の尖塔群などの存在をみると、修行の場を広く一般(衆生)にも提供するための建築と考えるとしっくりするような気がする。
特に、のべ1万体以上のキャラが登場する、いわば「壁画劇場」は、一人一人の像が、きっとモデルがいたに違いないと思わせるほど個性的な造形だ。中国甘粛省敦煌を連想させる「飛天」らしき像も見られる。
ボルブドゥールと同じ8世紀に造られた東大寺の大仏も、やはり巨大仏教モニュメントだが、ボルブドゥールも東大寺もともに「華厳宗」に属するという点も面白い。
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さて、ジョグジャから新たに導入されたバス路線の1番系統に乗ると直通で行けるプランバナンも、世界遺産として名高い。こちらは、ヒンドゥー教の遺跡である「ロロ・ジョングラン」が目玉である。シヴァ神を筆頭に、ヒンドゥーの3神のお堂の集合体だ。
ジョグジャカルタとプランバナンは、上記のように、乗り換えなしでバスで結ばれていて、ごく近くにあるものの、これらが建てられた8、9世紀ころは、別の王が支配する隣国同士にあった。両国は、仏教とヒンドゥー教という異なる宗教をそれぞれ国教としていたが、宗教紛争はなかった。そして両王家は、姻戚関係にもあり、極めて友好的であったという。プランバナン側は、ロロ・ジョングランからほんの数百メートルの所に、同じくらい立派な仏教寺院(つまり異教の寺!)さえ建てていた。
ジャワ島を代表する2つの世界遺産を眺めながら、建築物としての規模や精緻さもさることながら、当時のかれらが、「お隣とは宗教・文化を異にするけれど、仲良く共存する」というのでなく、「文化が違うことを、むしろ幸いとして、絶好の友好の手段にする」という発想だったのではないか、と思い、むしろその知恵に感じ入った。