2.贈り物としての干し魚肉

韓国でも、正月(といっても、旧正月)前には、日本の「歳暮」と同様、目上の人に贈答品を贈る慣習がある。
この時期にはデパチカなども韓国版お歳暮商戦を繰り広げ、各種の好適品をとり揃えて客を待つ。

典型的なお歳暮向き商品として、フルーツ、牛肉、干しキノコのように、日本の歳暮と共通のものが多い中で、韓国ならでは人気がある物として、干し魚(するめ,いしもち等)が並んでいる。
日本で「儀礼としての」贈り物に、海産物の塩干物が用いられることは殆どないだろう。特にそれが相手の大好物であるとわかっている場合なら別だが、「無難」をもって良しとする儀礼品には、文化的・社会的価値がより高いと世間的に認知されているものが選ばれるだろう(経済的価値とは別に)。干し魚は、日本ではどうも、魚肉の中では相対的に価値が落ちると見なされているようだ。
日本でも「鮭の新巻」は喜ばれる贈答のひとつとなっている。ということは、塩を施してあることが「価値」を下げるのではなく、干した魚であることがマイナス要因と考えられる。
天日に晒すことでかえって魚肉の味がよくなるという現象は理解されていても、それと文化的価値づけとは別なのだ。
韓国も三方を海に囲まれていて豊富な漁獲高をあげ、魚食文化も発達しているほうだが、細かく見ていくと、日本とはこういうトリビアルな違いが見つかる。そして、そもそも、なぜ、わが国では干した魚は贈答にあまり向かないのか?と、考えたことのない疑問にも思い至る。
椎茸なら、干した「どんこ」など、高級食材として数えられるのに、不思議である。


同じキノコといっても、写真手前の方にある「霊芝」は、日本ではちょっとマニアックすぎて、お歳暮としては全く「無難」でない。この辺も、漢方大好きの韓国らしい。