3.“名古屋食”の不在

日式の話の、続きである。


大阪を発祥とする飲食物は数多いが、日本全国を制覇した
お好み焼
たこ焼き
オムライス
けつねうろん(きつねうどんのこと)
豚まん(肉まんのこと。中華を母体としつつ関西で発達)
などの大阪食は、どれも、韓国にも存在し、且つよく定着している。

これに比べると、日本第3の都市圏たる「中京圏」の中心地・名古屋の飲食文化は、驚くほど韓国に採り入れられていない。

きし麺
味噌カツ
ひつまぶし
と、すぐ思いつくものを挙げても、韓国で一度も見たことがない。鰻どんぶ(장어구이덮밥)はちっとも珍しくないのに、小さく切った鰻をご飯の上と中へ二層に並べて供する店はなさそうだ。私が知らないだけかもしれないが、あったとしても、ごくマイナーな存在だろう。
エビフライは韓国にもあるが、中京地方のそれのような堂々たるサイズではないので、「エビフリャー」と呼ぶ気になれない。あるとはいってもエビフライ自体の浸透度も低く、洋食屋に入っても、トンカツや魚フライがメニューにある率に比べれば極端に少ない。

菓子のジャンルでも、やはり、ういろうがない。
他の、もなか、羊羹、鯛焼き、せんべいなどの日本の菓子は、どんな小さい街へ行っても簡単にスーパーやコンビニで手に入るのに、である。

昨年、株式会社「矢場とん」とほとんど同じキャラクターを設定し、同じTシャツをスタッフに着させてソウルで営業していたパクリYabatonが知的財際侵害で問題となったことがあったが、このニセ矢場とんも、メニューに「味噌カツ」は載せてなかったそうだ。


これは、名古屋が関西ほどには在日が多く居住していなかったこと、日本国内でも食い倒れ大阪の飲食が日本料理の一ジャンルの位置を占めているのに比べて名古屋食はまだ一地方料理にすぎないこと、などが理由だろうとは思うが、それにしても、知られなさ過ぎではないか。
去年秋の、米住宅バブル崩壊を契機とする大不況突入までは、日本で最も経済的に元気な地域として東海が大きくクローズアップされ、全国ネットの番組でネタになった。名古屋食のみならず名古屋方言、名古屋の習俗などを扱った「名古屋本」がブームとなった。この希代のチャンスにも、韓国では名古屋食が普及しなかったとなると、今後当分、韓国では味噌ダレをかけた料理や、あの平べったい麺は広まりそうにない。