台湾旅行09−阿里山鉄道

1週間、台湾へ旅行してきた。約4年ぶりである。
今回のメインは阿里山鉄道。台湾中部の嘉義駅で縦貫幹線から分かれていく支線で、終点阿里山は、嘉義から約80キロ東にある。
762ミリの狭軌を、5両連結の小さな客車がゆっくり4時間以上かけて走る。トロッコ列車のようなのを想像していたが、空調の効いた客車で、窓も嵌め殺しのため、安全で快適ではあるが、野趣にはいささか乏しい。ただ、横揺れが激しい。車幅は狭いものの、座席は2人がけと1人がけが並ぶ形なので、窮屈ではない。全車指定席である。
地球の歩き方』の最新版には1日1往復とあるが、3往復に改正されていた。午前10時の便がちょうどよいので、20分ほど前に嘉義駅へ行って切符を求めると、全席売り切れであった。13時25分発にする。
嘉義から1時間5分で、樟脳寮。ここで乗り換えてください、と案内がある。本来は終点まで直通のはずだが、途中、数百メートルにわたる崖崩れのため、線路が宙吊りになっているのだ。列車を降り、登山コースの一部を登って、同じだけの標高差をくだると、臨時の乗降所がトンネルの入り口に設けてある。乗り換えの山道歩きは15分くらい。ここから、同じ5両編成の別の列車に乗る。崖崩れをはさんで、折り返し運転をしているわけだ。
乗車券にも、その乗り換えの詳細は印刷されている。それも中国語版・日本語版・英語版と印刷してあるくらいだから、かなり前から不通になっていると見え、かつ、復旧の見込みも立たないのに違いない。

乗り換えてまもなく、有名な4重ループ線にさしかかる。山を何度も巻きながら、カタツムリの殻の模様のように敷かれた線路を登っていく。窓際に方位磁石を置いておくと、針がゆっくり回転していく。地図の上では一向に終点に近づかないわけだが、標高を一気にかせぐのだ。20世紀の初頭に日本治下で敷かれたというから、もう開通して100年ほど。ずいぶん周到な計画のもとに出来た鉄道であるに違いない。ちょうどこの4重ループの辺りで、植生が熱帯相から暖帯相に代わり、車窓からココナツの木が消える。

その他にも、スイッチバックあり、50パーミルの急坂ありで、まことに森林鉄道の名にふさわしい。最後尾の機関車に押し上げられる形で、急カーブの連続を登攀し、18時近くに終点阿里山に着いた。