台湾旅行09−日流の象徴(?)としてのタイヤキ

大韓民国中華民国(台湾)は、1945年まで植民地として日本支配下にあった所であるという共通の歴史を持つ。民族がイデオロギーによって2つに分断された状態にあり、そのうちの資本主義体制側の国(ここでは一応「国」といっておく)である、という点も共通である。
しかし両国には、歴史の共通点にもかかわらず、ずいぶん相違点も多い。

今日は、タイヤキの韓台比較をしてみたい。

タイヤキはもちろん日本人の考案したものである。東京で、明治末期か大正初めに鯛の形の焼き皮にアズキ餡をはさんだものが登場しているという。(鈴木克美『鯛(ものと人間の文化史シリーズ)』法政大学出版局

韓国や台湾に伝わったのが何年ごろかはわからない。個人的には、1982年に初めて韓国へ渡航したときには、見た記憶がないが、1997年にはあったような気がする。普及したのは、そう古いことではないのかもしれない。今では、全国の屋台で売られている。
日本だと、タイヤキ専門店もあって、NTTの職業別電話帳(タウンページ)にも1項目が立てられているほどだが、韓国・台湾では、屋台でなく店舗を構えた形態のタイヤキ専門店は、見たことがない。また、スーパーの惣菜コーナーにパックされて売られているタイヤキも見たことがない。

韓国版のタイヤキは、日本のタイヤキよりはだいぶ小さい。1個30グラム程度ではないかと思う。韓国語で붕어빵つまり「鮒パン」と呼ぶ。大きさを別にすれば、構造・形は全くタイヤキの形であり、明らかに、タイヤキの真似だ。そして、「鮒パン」という名前も、多少はオリジナリティは出してますよと言いたげな下手なアリバイ工作をするがごときネーミングである。
大体、イーストが入ってないんだから「パン」じゃないし。なんで「鮒」なんだ。臭そう…。

一度だけ、韓国で、日本のタイヤキと変わらないくらいのサイズのを見たことがあるが、その屋台の看板には、 잉어빵(鯉パン)と書いてあった。どうしても、淡水魚にこだわるつもりらしい。それとも、日本人の鯛信仰のほうが、「妙なこだわり」というべきだろうか?


一方、台湾は、やっぱり屋台で売ってはいるが、サイズが日本のタイヤキと同じである。といっても、定規で測ったわけではないし、そもそも日本のタイヤキ焼き器のサイズはどれも同一なのかどうか知らないが、厳密なことは措くとして、われわれがタイヤキと聞いて思い浮かべる大きさどおりといってよい。
また、名前も「鯛焼」である。韓国のように、いろいろな意味で臭い名前はつけない。

 ↓高雄の鯛焼屋↓

むしろ台湾人は、日本から来たものを、なるべく原型のまま寸分変えずに提供する店を評価する。店のほうでも本場日本のものと変わりありませんよということをウリにするようだ。
ただし、味は、日本で最も甘さ控えめなタイヤキ店のものと比べたとしても、台湾の「鯛焼」のほうが、なお淡味だろう。
もっとも、食べ物の味つけが淡白なのは鯛焼だけではない。そして、台湾では日本の文物を日本そっくりに作って売る業態が消費者に訴えるという点も、ひとりタイヤキのみに見られる現象ではない。パクるくせに日本のオリジナルをマイナーチェンジしたがる韓国とは好対照といえる。(続く)