田英夫氏逝く

田英夫氏が亡くなった。

不勉強で申し訳ないことだが、氏の政治家としての顔しか知らず、今回、氏の功績をまとめた報道を見て、JNNの「ニュースコープ」のキャスターだったことを、やっと知った。
ニュースコープ」という番組は、まだ小学生の時分だったが、親が見ていた記憶がある。しかしその初代キャスターが、のちの社民連代表と同一人物だとは知らなかった。
年代の違う有名人については、亡くなって初めて、そういう人だったのか、と知ることはよくあるが、今回も「キャスター」という職業名を冠したマスコミ人の はしり だったんだな、と恥ずかしながら漸くにして知った次第。

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韓国に留学中、「アンカーマン」と「キャスター」の違いを、韓国人になかなか理解させられず、その説明に手間がかかったことを思い出す。
ankermanないしankerpersonはれっきとした英語であるし、韓国にもいる。しかし、それは放送局の職員である。キャスターは、局という、企業(つまり、営利目的の組織)に縛られない、あるいは少なくとも相対的に縛りの少ない立場で、ゼネラリストとして報道にかかわり、コメントもする。そして、何より番組の顔でもある。
韓国のアンカーマンは、所詮アナウンサーである。コメントはしない。
韓国人は、「じゃ、日本のキャスターと、「解説委員」や「論説委員」とはどう違うのよ」と突っ込んでくる。
「キャスター」は、解説者のような、解説だけのためにゲスト的に番組へ呼ばれ、何かの社会事象について専門的知見をもってしゃべる人とは違うのだ、とかなんとか答えたと記憶している。
日本人なら、「キャスター」と「コメンテイター」を区別できない人がいるとは考えにくい。「キャスター」と相当する仕事は、韓国では育ってないのだな、と思い、そして、キャスターという、日本にいると当たり前の存在も、久米宏筑紫哲也のような、認知度の高い人が開拓した経緯あってのことなんだなと痛感した。
そのときも、そのパイオニアが誰だったのか、は調べずにいた。

1960年代からすでに報道のあり方を模索し、キャスターという形で、1つの答を示した人が、86歳の生涯を閉じたのだが、1年前の今月、筑紫氏が先に逝っている。田氏は、あの後輩の死をどう見送っていたのだろうか。