ヒ素で生体を作る生物

NASAが金曜日に発表した、未発見のタイプの生命体に関する記者発表。
ETが見つかった、とでもいう話を聞けると思っていた人が多かったとみえて、「肩透かしをくった」というようなコメントが聞かれたが、そういう人は、想像力が足りない。
体内の構成物質やDNAのリン部分を、性質のよく似た元素であるヒ素に置き換えられるものなら、
例えば酸素の代りに、酸素分子同様に助燃性を持つ塩素を使って、代謝エネルギーを取り出せる生物もいるかもしれない。それどころか、炭素でなく、ケイ素つまりシリコンで生体を合成できる生き物も考えられるというのは何かで読んだ記憶がある(SFだったかな?)。
そうなると問題は窒素だが、とにかく生命体の範疇を広げるべきだという知的刺激をもたらした一件であった事は間違いない。

カリフォルニアで見つかった細菌は、主要構成物質の1つであるPの代替元素を持ち、かつそれが通常は猛毒の元素だったために騒がれたのだが、微量元素なら今までにも、血液中の酸素を運ぶ蛋白質として、ヘモグロビンなどにある鉄がなくて、銅など他の金属を含む血球を合成して生きている動物もいることが知られている。「自己複製能力を有する分子のかたまり」が、ある星に生まれるときは、当然、その星で大量に調達できる「ありあわせの材料」で構成されるということは、ま、当たり前のことだ。
窒素くらい無しで一向に困らない生命が存在したって驚くには値しないということかもしれない。

そして、今回の、もっと大きな教訓は、公表前に大げさな予告を打って過剰な期待を大向こうに持たせるのは、ハリウッド映画だけにしておいたほうが、後でとやかく言われなくて済む、と、そういうこと(?)。