ピーター・フォーク(83)

刑事コロンボ』は面白かったなー。
犯人が誰であるかも、どんなトリックを使うかも、初めから殺人現場を見せて視聴者に教えることでいわゆるミステリー性を排除し、犯人にどう尻尾を出させるか、に絞った構成も斬新。また、立場的には一公務員で、自分が納得するためならドブさらいも厭わぬ地べた派かつ職人気質の主人公は「安楽椅子探偵」へのアンチテーゼだったかもしれない。
トレードマークとなった着たきりのコートは、フォーク本人が出したアイデアによる演出だったそうだ。そんなダサい外見と、観察力と推理力のシャープさの 不釣合いが何とも魅力だった。
コロンボの所属する「殺人課」は日本でいうとほぼ「捜査一課」。日本で最も人気のあった刑事ドラマといっていい『太陽にほえろ』が、その捜査一課のチームプレイと、藤堂係長(石原裕次郎)の人情味をウリにしていたのと比べると、コロンボは助手ひとり置かない徹底した個人芸がミソ。人気刑事モノにも、やはり日米社会の違いが現れていたようだ。
それにしても、「My wife says,・・・」というコロンボの口癖を、「うちのカミサンに言われるんですよね」と訳したのは、日本語吹替版の翻訳をずっと担当した、翻訳家・額田やえ子さん(故人)の手柄だろう。そのへんの苦労話は、本人がエッセイで打ち明けている。もしあれを「わたしの妻が言うには…」などと訳していたら、このドラマ、これほど日本で愛されただろうか?