天野祐吉名人

20日付け朝日新聞の「ニュースの本棚」というコーナーに書かれた文章を読んだばかりだったので、「え!? あの天野さんの訃報?」と大変驚いた。
広告というものを、単に商品を消費者に知らせる宣伝としてでなく、世相や人間の本質を強く映し出すテキストとして見つめたコラムは、他の追随を許さぬ鋭さとユーモアがあり、大好きな書き手の一人だったので、大変残念だ。
いつだったか、「政治家の言葉は、話し手と聞き手の間にポタポタ落っこちてる」と書いておられたのが忘れられない。自分の言葉が聞き手まで届くように言葉を選び、届いたのを確かめるようにゆっくりと、時に品のいいアイロニーをまじえながら語る天野さんなればこそ言える批評だったと思う。
70、80歳代になると、時代についていくのも大変なのが普通ではないかと思うのに、新聞の定期コラムで変わらず現代を斬る、その視点と話の持っていき方に教わるところが大きかった。
天野さんはなんだかんだ批評しながら 広告が好きで、そして同時代を生きる日本人のことを究極のところで愛していたのかなぁと想う。
子供のための作品にも才能を奮い、また掛け値なし“生涯現役”だったという2点で、先日逝ったやなせたかしさんと共通項のある天野さん、お疲れ様でした。