あまいもの

私、両刀使いだ。
この比喩表現、いつ頃から使われ出したのか(もう一つ別の意味の比喩もあるが、それも含めて)知らないが、1981年の鈴木清順監督へのインタビュー記事に出てくるので、当時もう普通に広まっていた言葉だろう。で、監督同様、酒も甘いものもたしなむ。別の言い方で「どろぼう上戸」と呼ぶこともあると何かで読んだが、こちらは使われているのを実際に聞いたことはない。
両刀使いだけど、「無人島へ何年も住むとして、基本栄養素のための食糧以外に嗜好品を、アルコールか甘味か、どっちかを持っていくことができる」と仮定したら、迷わず甘いほうを選ぶ。
そして、「無人島への輸送の都合で、和か洋かに絞れ」と言われたら、今度はちょっと迷ったあと、和菓子を選ぶと思う。
「その和菓子は、無人島滞在中に種類を変えると、嗜好品輸送費が倍になる」という料金設定だったら?
そんな小難しいプチ・ロビンソンクルーソー体験業者があるとは思えないが、まぁ、そういうこととする。私なら、何年食べても飽きないだろうと考えられる「たった1種類の甘いもの」に、北海道小豆を使ったカメヤマをお願いしよう。カメヤマとは、関東圏では「善哉」と呼ぶものに近い。餅なしの「しるこ」の水分を完全に蒸発させたようなものである。甘味喫茶でも滅多に見ないが、大阪に行くとたまにメニューにある。
保存の問題があるから、ゆであずき缶詰から、比較的汁気の少ないものを選んで代用しても構わない。
ただし必ず原材料は北海道産に限定させてもらう。
小豆自体がそう世界中で栽培されている穀物ではないが、台湾産・韓国産・中国産など試してみて、味の差が歴然としていると確信した。本州産のものもあるが、やはり北海道のとは舌触りがちょっと違うように思う。
現実の話でも、海外旅行から帰ってまっ先に食べたいのは、寿司でもお茶漬けでもなく、小豆菓子だ。空港から自宅への帰りにまずカメヤマは手に入らないから、大福でも御座候でもいい、とにかく北海道小豆の入ったものにむしゃぶりつく。
家でもゆであずきを作って食べている。白砂糖は発がん性が噂されるので、黒砂糖を少しだけ使う。
そんな人間のどこが両刀使いだ?と言われるかもしれないが、ま、そういうお題だから…。