運転しながらリスニング

まだ韓国語を教え始めて間もない頃のこと、ある学習者から「車で出かけるとき、運転しながら教材のCDをかけて聞いていますが、聴解力に効果はありますか。」
と、質問を受けたことがあった。
国語学習で、聞きっぱなしでリスニングが上達することはまずなく、自分でCDから流れる音をそっくりに真似たり、その意味するところを思い浮かべたり、時には書き取りをしたり、シャドウイングをしたり、といったふうに、いろいろな聞き方をすべきだと思う。運転中にそんな作業を伴うリスニングをされたら、前後・横を走る車や歩行者は剣呑でしょうがない。もちろんその質問者もただ聞き流しているのである。
「ただ聞き流すだけで○語ができるようになる」という触れ込みの教材が市販されているが、よほどよく工夫されていないと羊頭狗肉に終わるだろう。実際に買って試したわけではないから、信じていないというレベルであるが。
もし本当に効果があるとすると、上に書いたような作業がおのずと出来るように編集されているのだろう。よくある入門書に附属の、本文だけをネイティブが読み上げる式のCDの聞き流しでは、多少その言語の響きに耳が慣れるという域を出まい。
その質問者は、CDの使い方として、ただ車で聞くという1通りの使い方しかしていないようだった。

その時代には、聴解力について確たることも述べられず、まちがいなくリスニング力を伸ばせる効果的方法を自分自身よく知らないこともあって(こっちが知りたい)、励ますような、ねぎらうような、何となくお茶を濁した返事をしてしまった。
「全く何も聞かないよりはましでしょうけど」くらいの返事をすべきだっただろうな、と後悔している。